ひきつづき(しかしうろ覚えになりつつ)宮崎親子


 そうして、そうやってゲド戦記をつくった宮崎吾朗のことを、宮崎駿が「他のスタッフにとっては全く必然性はなかったけど、彼にとっては必要な仕事だったんでしょう」みたいなことを言っていて、そうしゃべっているときの表情はすごい説得力を持っていて、それは優しいというのでもなかったし、厳しいというのでもなかった。そういうその都度の態度の一面性みたいなものにとらわれない表情と言葉で、息子がやった自分と同じ種類の仕事についてコメントするというのはすごいことだ。

 その言葉は学部四年のときに見田さんと西口さんと行った(西口想とそのとき初めて会った)保坂和志がゲストを務めた他大学の授業で、発表者の大学院生の発表について、保坂和志が「なんていうかいま発表してくれたことは私にとっては全然重要じゃないんだけど、あなたにとっては重要な問題を考えてくれたんだと思うんだよね」みたいなことを言ってて、すごいなと思ったのとちょっと似ていて、やっぱり優しくも厳しくもないけど(少し厳しいかな)、優しいとか厳しいとか、教育的だったり保護的だったりしない態度で、つまり教育的に、保護者的には意味のない態度で、そういう角度のコメントは、コメントされた人を救わないかたちで救っていると思う。このいいかたはなんかだめかもしれなくて、どういえばいいのかわからなくて、困るけど、救わないかたちで救うというのは、救わないのほうに強い比重があってそのことで仕事そのものをみつめる視座が与えられるという救いがあるというようなことだと思う。

 これ以上考えられないのでまたこんど考える。